自然乾燥材と強制乾燥材について

現在約9割以上のハウスメーカー・パワービルダー・工務店がKD材(kiln dryキルンドライ、kyousei dryKDでは有りません)と呼ばれる強制乾燥材と集成材と呼ばれる、小さな木片を接着剤で接ぎ合わせた材料を使用しています。

 

特徴や利点は

1 表面の割れや収縮が少なく、木の捻れ等の狂いも抑えられクレームがAD材よりも少ないという事です。

2 伐採後商品となるまでの時間が短いという事です。伐採直後に窯に入れ乾燥させる事は有りません。人口強制乾燥といっても、乾燥度の異なる木材を混ぜてしまうと、過乾燥又は未乾燥の材料が出来てしまいますので、少しの間天日乾燥して均してから乾燥炉に入れます。

AD材ではどんなに急いでも(又は部材が小さくても)3ヶ月以上は楽にかかりますので、数週間で商品として流通できるKD材は材木屋さんにとっても資金回収が早く、魅力的な商品と言う事になります。伐採後ある程度の強度に達するまでの時間も短い様です。

3 集成材では捻れや狂いを特に嫌う柱や、大断面も可能な事から、梁材にも良く使用されている様です。

平成12年住宅瑕疵法が施行されて、120で処理する高温乾燥(特に、杉の芯持ち材の人口乾燥)が実施されだしました。簡単に乾燥を説明すると、材のリグニン成分を軟化させて、乾燥の進行で材に引っ張りが生じたとき、材面割れを起こさない様に処理します。リグニングの軟化温度は85℃以上です。85℃以上の温度で約13時間ぐらい蒸し、次に乾球温度120℃-湿球温度90℃24時間処理するのが基本です。リグニングを軟化させる事=木の組織結合する組成を破壊させ、強度の成分をなくす事です。又、高温処理=セルロースが糖分に変わり、耐蟻性を落とすとの見解もあります。

 

しかし、日本の住宅の平均寿命は30年といわれ、極端な話、その間もてば良いということなのでしょう。木の組織が壊れ(吸放湿能力の低下)木がブス黒くなり、焦げ臭くなっても(フィトンチッドの消滅)間伐材を安く使用するには、当然許される事・仕方無い事だと国も判断している様です。(おそらくそこまで知識のある方が周りにいないのでは?)

 

長期耐用住宅に対応するべく、製材屋さんも高温の強制乾燥ではなく、処理温度の低い低温除湿(処理温度50℃)に変更していますが、それでも木材にダメージが有る事は否めません。

 

家を建てるにあたり、その様な焦げ臭い、木肌の焦げた、木の効能の失われたものを使うのは誰も望んでいないと思います。

ここでAD材について説明したいと思います。

AD材とは自然乾燥された木材を指します。自然乾燥では、内部より表面の乾燥が早く進みます。木材は乾燥すると収縮するので、表面側がまず収縮してゆきますが、内部は未乾燥で元の体積を維持しているので、表面付近には年輪方向の引っ張り応力が発生し、「ひび割れ」が発生します。

このひび割れは、強度には無関係ですが、見た目が悪く、「木の性質」に理解が得られないユーザーには、クレームの要因になり易いので、建てる側はこのような事を嫌います。

 

強度的には蒸気での人口乾燥は自然乾燥と同じ強度を保っているとのデータから、多くの方はクレームの少ない人口乾燥材を選ばれると思います。

しかし、今、目先の強度は一緒もしくはKD材の方が強いかも知れませんが、強度の出方や対応年数が全く違ってきます。

KD材や集成材は、鉄やプラスチックと一緒で新品(施工)時が一番強く、だんだん弱くなってきます。対応年数も使用場所によって一概には言えませんが、30年~35年ぐらいだと言われております。一方AD材は年数が経つにつれて強度が増してゆきます。ヒノキを例にとっても「樹齢100年のヒノキの場合は、伐採して100年後にその円熟点にある」と言われ、100150年かけて圧縮・引っ張り強度が最大になり、約三割前後伐採時よりも強くなり、その後数百年から千年近くかけて伐採時強度に戻ってゆきます。

 

初期強度が強くても、木の特徴を殺してしまった(呼吸もせず)対応年数が短い木材よりも、最低でも樹齢くらいはもつ本当の意味での天然素材の「自然乾燥材」を選びたいものです。

 

木材の吸放湿についての実験(200年住宅再生ネットワーク機構)を紹介したいと思います。

各種木材の断面サンプル

木材の吸放湿性能の実験結果です。

 

新築住宅に使う柱の湿の吸放性能がどの程度なのか、実際にサンプルを使って調べました。

方法は30cm35分の柱、天然乾燥材、人工乾燥材、集成材の3本を準備してそれぞれの重さを計り、それを24時間水に付けてその後の重量の変化を調査しました。実験結果は水を一番良く吸ったのは、天然乾燥材で浸水前を100%とすると13%プラスの113%重量が増加しました。人工乾燥材と集成材は6%~8%の増加にとどまりました。天然乾燥材が水分(湿気を良く吸う事が実証されました)

 

その後の乾燥の進み具合ですが水から出して5時間後から2%程度減少し、24時間後には天然乾燥材は約半分に減少、人工乾燥材と集成材は1/3に減少しました。その後48時間後、96時間後には全ての材で1%程度に減少、これは測定の誤差程度かと思いますのでほぼ水に付ける前に戻ったのと同じ状態かと考えられます。

 

解りやすくグラフにすると、

実験結果

まとめ。

人工乾燥、集成材共吸湿性能が低い、68%、対して天然乾燥材は13%で約倍の水を含む事が出来る。

乾燥の具合は24時間程度で半分となり、約96時間でほぼ水に付ける前まで重量が減少した。

ただ天然乾燥材のみ乾燥時に新しい割れが発生したが、天然乾燥材の吸放出性能の高さは証明されました。

この実験を3度繰り返すと、天然乾燥の部材は繰り返し同じ数値を示すのに対し、集成材、KD材は吸収できる水分量の限界がどんどん低くなり、

その後ほぼ吸放湿能力を失う事がわかりました。

 

以上の事からも、家を建てるユーザーにお勧めしたいのは

地元の天然乾燥材を使う事。

呼吸する木材は自然乾燥材だけなのです。

200年住宅再生ネットワーク機構より抜粋

 

このような実験で裏付けられている事から、地元の自然乾燥材が

一番良いのです。

なぜ地元の材料が良いかと言うと、地元の気候風土に合うという事の他に、運搬時の二酸化炭素の排出量削減にも期待が持てるからです。

炭素排出量

KD材はすでに製造工程で重油をたいて乾燥させているので、多量の二酸化炭素を排出しています。

森林伐採スピードの低下(森林資源の保護)や、二酸化炭素の排出の抑制という環境の点からも、AD材は良いという事になります。