「木も人間も同じ自然の一部であり、自然の中に生かされている」という観念にたつと、これほど相性の良い材料はありません。
昔はほとんどを木で造り、桧皮やかやの屋根を葺き、土で壁を塗っていました。
その全部が天然素材だったのです。
それが近年になり、化学物質を含んだ建材が主流になってから、様々な弊害をもたらしております。
木や天然素材をもう一度見直そうという風潮がおこってまいり
ました。
・調湿作用(効果)
一番有名な話ですと奈良東大寺の正倉院だと思います。
校倉造(あぜくらづくり)という木を横に積み上げた、
高床式の宝庫です。聖武天皇・光明皇后のゆかりの品を
千年以上守ってきました。
これは、木造の建物が調湿し庫内の湿度を適正に保っていた
からです。
更に厚さ2cmの杉の木で出来た唐櫃(からびつ)に納められて
いました。
唐櫃の中は庫内の湿度変動の10分の1程度と安定しており、
優れた調湿効果が証明されました。
身近な例を取り上げてみますと、
「カビの発生が顕著にみられた台所や脱衣室に、杉やヒバの腰壁を貼ったら、カビが生えにくくなった」
「結露が発生しやすい部屋の床や腰壁に、無垢材を使ったら結露が減少した」 などあります。
それとインフルエンザウイルスは湿度が50%になると多数が死滅
してしまうので、 校舎や老人ホームに木材を多用すると、
インフルエンザ等にかかる人が減少するという報告もあります。
快適な生活には、湿度は高すぎても低すぎてもいけません。
周囲が乾燥してきたら放湿して、湿度が高くなってきたら吸湿
する、この様な調湿作用が木にはあります。
・防虫・防蟻力
前出のフィトンチッドと調湿作用が相まって、特定の樹種(国産では特に青森ヒバ・ヒノキ)には 強い防虫・防蟻力・殺菌効果が
あります。
シロアリは湿度の高い状態を好みます。カビやそれらを餌にする
ダニも一緒です。
木はその多湿状態を正常(50%~65%)に調湿し、シロアリや菌類・
ダニの発生繁殖しにくい湿度に保ってくれます。
さらにシロアリの苦手なテルペン系のフィトンチッドを発散
します。
フィトンチッドには抗菌力やカビ・ダニの繁殖を抑制する効果も
ありますので、 防虫・防蟻・抗菌力が発揮されます。
悲しいエピソードなのですが、夏にカブトムシの寝床造りに
青森ヒバのおがくずを入れたところ、 カブトムシが死滅して
しまったのです。 (ヒバの木を多く使った家の中で虫やカブトムシを飼ってもさしつかえありません)防虫力の強い フィトンチッドが
高濃度に入ってある虫かごに入れたためだと思われます。
その他には
「ヒバの家には蚊が来ない」
「トドマツを使うと、結核菌やジフテリア菌を寄せ付けない」
「ヒノキには、消炎・鎮静・鎮咳作用がある」
「スギには大脳を刺激して、脳の働きを活発にする作用がある」
等耳にした事があると思います。
この様に様々な効果があっても、人体には悪影響や副作用が
ほとんどなく、 かえってリラックス効果があるのですから、
本当にありがたいものです。